「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、すべてをおすすめしたい作品なのか
松本零士さん原作の「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、1978年から1979年にかけて放送されたSFアニメです。テレビアニメ版は全42話で、キャプテンハーロックとアルカディア号の仲間たちが、地球を脅かすマゾーンと戦う物語として描かれています。
私自身、「宇宙海賊キャプテンハーロック」は非常に優れたアニメ作品だと思っています。
ただし、全42話を一つの作品として考えた場合、すべてのエピソードが同じように面白いかというと、私は少し違うと思っています。
印象に強く残る話がある一方で、個人的には「ここは少し物足りない」と感じるエピソードもあります。
そのため、現在Amazonプライムなどで視聴する場合でも、費用を考えると「ぜひ全話を見てください」と簡単におすすめすることには、少し慎重になります。
しかし、この作品の中で「もし一話だけ見るとしたら、ぜひ見てほしい」と私が思うエピソードがあります。
それが、第33話「たった一人の突撃!」です。
※以下、作品の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。

大田原剛三という、もう一人の主人公
このエピソードで私が強く心を動かされたのは、キャプテンハーロック本人ではありません。
登場するのは、大田原剛三という人物です。
大田原剛三は、かつて地球防衛軍の長官を務めていた人物です。
彼には、若い頃に忘れられない女性がいました。
それが、昔の恋人であるマスさんです。
二人には若い頃の思い出がありました。しかし、ちょっとした行き違いから、二人は結ばれることなく、それぞれ別の人生を歩むことになります。
その後、大田原は地球防衛軍の長官にまで出世します。
ところが、彼の人生はそこで大きく崩れてしまいます。
大田原が結婚した女性には、マゾーンに関係する重大な秘密がありました。そして、妻や娘をめぐる出来事から、地球防衛軍の機密情報が漏れていることが明らかになっていきます。
大田原は苦悩の末、妻と娘を自ら射殺するという悲劇を起こします。
さらに、そのことによって彼自身も職を追われることになります。
かつて地球防衛軍の長官だった男が、すべてを失ってしまったのです。
長官から、酒場で飲んだくれる男へ
それからの大田原剛三は、かつての栄光とはまったく違う人生を送っています。
酒場で酒を飲み、歌を歌いながら、ただ時間を過ごしている。
かつて地球を守る立場にあった人物が、今では社会の表舞台から完全に消えてしまっています。
ここだけを見ると、単なる「落ちぶれた元軍人」の物語に見えるかもしれません。
しかし、このエピソードのすごいところは、ここからです。
マゾーンの侵攻によって、地球が危機的な状況に陥ります。
ところが、地球を守るはずの防衛軍は十分に機能しません。
戦うべき人間たちが動けない。
誰も出撃しようとしない。
そんな状況の中で、かつて地球防衛軍の長官だった大田原が動きます。
「たった一人の突撃」に心を打たれる
大田原は、もはや防衛軍の長官ではありません。
立派な制服を着て指揮を執る立場でもありません。
それでも彼は、一機の戦闘機に乗り込みます。
そして、たった一人でマゾーンの大群に向かっていきます。
私は、この場面を見るたびに胸を打たれます。
なぜなら、大田原には、もう名誉も地位もありません。
失ったもののほうが、はるかに多い。
それでも最後の最後になって、彼は「地球を守る」という自分の使命に戻っていくからです。
しかも、誰かから命令されたわけではありません。
誰かに褒めてもらうためでもありません。
ましてや、失った地位を取り戻すためでもない。
ただ、自分自身の中に残っていたものに従って、敵に向かっていくのです。
そして大田原は、マゾーンの大群の中へ単身で突撃し、戦死します。
この結末は、何度見ても私の心に残ります。
高校生の頃に見て以来、何度見ても涙が出る
私はこの作品を高校生の頃に初めて見ました。
その後、ビデオなどで何度も見返す機会がありました。
普通なら、同じ作品を何度も見ていると、最初に感じた感動が少しずつ薄れていくこともあります。
ところが、この「たった一人の突撃!」だけは違いました。
見るたびに、涙が出てしまうのです。
もちろん、これは私個人の感じ方です。
人によっては、そこまで感動しないかもしれません。
しかし私にとっては、何度見ても心を揺さぶられる、非常に特別なエピソードになっています。
私がこのエピソードから感じるもの
この話の魅力は、単純な「正義が悪に勝つ」という物語ではないと思っています。
むしろ、人生で一度失敗した人間が、それでも最後に自分自身の生き方を取り戻す物語として見ることができます。
大田原剛三は、決して幸福な人生を送った人物ではありません。
若い頃に愛する女性との関係を失い、その後は社会的な地位を手に入れながら、家庭を失い、職も失い、酒に身を任せるようになります。
しかし、人生の最後の瞬間に、彼は再び立ち上がります。
その姿を見ていると、「人間にとって本当の価値とは何なのだろう」と考えさせられます。
地位なのか。
財産なのか。
周囲からの評価なのか。
それとも、最後まで自分が大切だと思うものを守ろうとする気持ちなのか。
私は、このエピソードを見ながら、そんなことを考えてしまいます。
「キャプテンハーロック」を全部見なくても、この一話には価値がある
「宇宙海賊キャプテンハーロック」は、もちろん全体を通して見ることで楽しめる作品です。
ハーロック、アルカディア号、台羽正、ミーメ、ヤッタラン、そしてマゾーンとの戦いなど、魅力的な要素が数多くあります。
一方で、現在のように動画配信サービスで作品を見る場合、全話を視聴するには時間も費用も必要になります。
そのため、私は「絶対に全話を見てください」とはあえて言いません。
もし「宇宙海賊キャプテンハーロックを一話だけ見てみたい」と思うのであれば、私なら第33話「たった一人の突撃!」を候補の一つとして挙げたいと思います。
特に、若い頃にこの作品を見たことがある方なら、今あらためて見ることで、当時とは違った印象を受けるかもしれません。
年齢を重ねると、仕事、家族、失敗、別れ、そして人生のやり直しについて、若い頃とは違った見方をするようになります。
だからこそ、私は今でもこの一話を見ると、大田原剛三の姿に強く心を動かされます。
「たった一人の突撃!」
短い言葉ですが、その中には、大田原剛三という一人の男が最後に選んだ生き方が詰まっているように感じます。
高校生の頃に初めて見て以来、何度見ても涙が出てしまう。
私にとっては、それだけ特別なエピソードです。
「宇宙海賊キャプテンハーロック」に興味のある方、あるいは昔見たことがある方は、機会があれば一度、このエピソードを見返してみてはいかがでしょうか。
もしかすると、若い頃には気づかなかった大田原剛三の生き方に、今だからこそ感じるものがあるかもしれません。


コメント