はじめに――安全保障は「遠い政治の話」ではない
2026年8月7日、東京都は、東京駅近くの「八重洲駐車場」を、弾道ミサイル攻撃などの際に、より安全に避難できる施設として整備するモデル事業を開始すると発表しました。
東京都によれば、弾道ミサイルの爆風や破片、建物の倒壊などによるリスクを念頭に、詳細調査、実施設計を行ったうえで必要な改修工事を実施する計画です。
このニュースを聞くと、
「日本も戦争に備える時代になったのか」
と考える人もいるかもしれません。
しかし、私は今回の取り組みを、もう少し生活に近いところから考えてみたいと思います。
なぜなら、安全保障とは、戦闘機やミサイルだけの問題ではないからです。
避難する場所があること。
緊急情報を受け取れること。
医療を受けられること。
交通や通信が機能すること。
そして、何かが起きたときに、自分自身が落ち着いて行動できること。
これらもすべて、「人の生活を守る」という意味で安全保障の一部だからです。
そして、この視点は、私が運営する「60代リスタートラボ」のテーマともつながります。
60代からの再スタートとは、仕事を探すことだけではありません。
これからの人生を、できるだけ自分の力で安定させるための生活設計を考えることでもあります。
今回は、八重洲駐車場の整備を入口に、日本の安全保障と、私たち一人ひとりの「生活を守る力」について考えてみます。
1.八重洲駐車場の整備は、何を意味しているのか
東京都が発表した今回の事業は、八重洲駐車場を、弾道ミサイル攻撃などの際に、より安全に避難できる施設として整備するものです。
東京都は、爆風、破片、建物の倒壊などによるリスクを想定し、詳細調査と設計を行い、その結果に応じて改修する方針を示しています。
ここで重要なのは、
「新しい地下シェルターを突然つくる」という単純な話ではない
ということです。
東京都では以前から、国民保護法に基づいて、弾道ミサイルなどから一時的に身を守るための「緊急一時避難施設」を指定しています。
東京都によれば、緊急一時避難施設とは、爆風などから直接の被害を軽減するための一時的な避難施設で、既存の堅ろうな建築物や地下施設などが想定されています。
つまり今回の八重洲駐車場の整備は、
「すでに存在する都市施設を、危機時にも活用できるよう、さらに安全性を高める」
という発想から見ることができます。
これは、都市インフラの新しい使い方を考えるという意味でも興味深い取り組みです。
2.なぜ今、安全保障を「生活の問題」として考えるのか
日本を取り巻く安全保障環境は変化しています。
2026年版防衛白書では、国際社会におけるパワーバランスの変化や国家間競争の顕在化、中国・北朝鮮などの軍事動向が取り上げられています。
ここで大切なのは、こうした国際情勢を必要以上に恐れることではありません。
むしろ重要なのは、
「国際情勢が変化したとき、私たちの生活を支える仕組みはどうなるのか」
という視点です。
たとえば、
- 電力
- 通信
- 交通
- 医療
- 食料
- 金融
- 情報伝達
- 避難施設
などです。
現代社会では、どれか一つが大きく機能しなくなるだけでも、生活に影響が及びます。
だから安全保障を考えるとき、軍事力だけを見ていては十分ではありません。
社会そのものが危機に耐えられるか。
この「社会の強さ」という視点が必要になります。
3.「守ってもらう」だけではなく、「自分でも備える」という発想
日本の安全保障を考えるうえで、日米同盟は重要な位置を占めています。
外務省も日米同盟を日本の外交・安全保障の基軸と位置づけています。
一方で、
「同盟があるから、日本自身の備えは必要ない」
ということにはなりません。
同盟による協力と、自国の危機管理能力を高めることは両立します。
実際、現在の安全保障を考えるときには、
- 防衛
- 情報
- 通信
- サイバー対策
- 医療
- 避難
- 物資の備蓄
- 交通網
などを含めて、社会全体の対応能力を考える必要があります。
ここに、今回の八重洲駐車場のニュースを見る意味があります。
安全保障が、
「国家が国境を守る問題」から、「社会が危機に耐える問題」へ広がっている
からです。
4.地下駐車場が教えてくれる「都市インフラの二つの顔」
駐車場は、普段なら自動車を止めるための施設です。
しかし、危機が発生した場合には、一定の条件のもとで、人を守るための空間として活用することが考えられます。
東京都が今回、八重洲駐車場をモデル事業の対象としたことは、その具体例です。
ここから見えてくるのは、
一つの施設に「平時の役割」と「非常時の役割」がある
という考え方です。
これは今後の都市づくりでも重要になるでしょう。
地下施設を単純に増やすだけではありません。
現在ある施設を、
「平時には便利な施設として使い、非常時には人を守る施設として活用する」
という発想です。
ただし、地下だから必ず安全というわけではありません。
施設の構造、出入口、収容能力、換気、通信、管理体制など、さまざまな条件を検討する必要があります。
だからこそ、今回の事業は「地下なら安全」という単純な話ではなく、
都市施設を危機管理にどう組み込むか
を考えるモデルケースとして見ることができます。
5.「避難施設がある」だけでは、人は守れない
ここは今回の記事で特に重要なポイントです。
避難施設を整備することは重要です。
しかし、施設があるだけでは十分ではありません。
実際に危機が発生したとき、
「どこへ行けばいいのか」
を知らなければ利用できないからです。
東京都は、弾道ミサイルが落下する可能性がある場合、Jアラートなどによって緊急情報を伝達し、情報に従って落ち着いて行動するよう案内しています。
つまり必要なのは、
施設+情報+行動
です。
避難場所が整備されていても、
- 情報が届かない
- 場所を知らない
- 行き方が分からない
- パニックになる
- 移動が難しい
- 医療的な支援が必要
となれば、実際の避難は難しくなります。
だから安全保障には、ハードだけではなくソフトの部分も必要になります。
6.ここからが「60代リスタートラボ」との接点
では、なぜ「60代からの再スタート」をテーマにするブログで、安全保障を取り上げるのでしょうか。
私はここに、一つの共通点があると考えています。
それは、
「突然の変化に備えて、自分の生活を立て直す力を持つ」
ということです。
60代になると、働き方が変わる人もいます。
定年を迎える人。
再就職を考える人。
副業を始める人。
B型からA型など、就労支援制度を利用しながら働き方を変える人。
病気や家族の事情によって生活設計を見直す人。
年金と仕事を組み合わせて生活を考える人。
こうした人にとって重要なのは、
「何も起こらないことを前提にした生活」
ではありません。
むしろ、
「何か変化が起きても、立て直せる生活」
です。
これは安全保障にも通じる考え方です。
国も、自治体も、企業も、個人も、
「危機は起こらない」
と考えるだけではなく、
「もし起きたらどうするか」
をあらかじめ考えておく。
この考え方は、60代の人生設計にも応用できます。
7.60代の生活設計と「危機への備え」は意外と近い
たとえば、仕事を失った場合を考えてみます。
収入がなくなれば生活に影響します。
しかし、
- 生活費を把握している
- 支出を整理している
- 複数の収入源を検討している
- 公的制度を調べている
- 再就職の選択肢を持っている
- 家族や支援機関との連絡手段がある
という人は、立て直すための選択肢を持っています。
これは「個人の危機管理」と考えることができます。
同じように、
「突然の災害」
「交通機関の停止」
「通信障害」
「医療機関へのアクセス困難」
などについても、事前に考えておけば、いざというときの対応力が変わります。
つまり、
安全保障を考えることは、恐怖を増やすことではなく、選択肢を増やすこと
でもあるのです。
8.復職・副業を目指す人にも関係する「生活のレジリエンス」
この考え方は、60代だけに限定されません。
復職を目指している人にも関係します。
副業を考えている人にも関係します。
障害福祉制度を利用している人にも関係します。
医療や介護と仕事を両立している人にも関係します。
生活が安定しているように見えても、何か一つ大きな変化が起きれば、仕事と生活の両方が崩れることがあります。
だからこそ、
「働く力」だけでなく、「生活を立て直す力」を持っておくこと
が重要になります。
私は、これを「生活のレジリエンス」と考えています。
レジリエンスとは、困難や変化があったときに、生活や社会を立て直していく力です。
この視点を持つと、安全保障と就労、福祉、生活改善は、まったく別のテーマではなくなります。
9.障害福祉・医療の視点から考える「誰一人取り残さない避難」
危機が発生したとき、すべての人が同じように避難できるわけではありません。
高齢者。
障害のある人。
病気の治療を受けている人。
歩行が困難な人。
情報を受け取りにくい人。
一人暮らしの人。
外国人旅行者。
こうした人々についても考える必要があります。
だから、安全保障を「強い国をつくる」という視点だけで捉えると、生活者の視点が抜け落ちる可能性があります。
本当に重要なのは、
危機が発生したとき、社会の中で支援を必要とする人まで含めて、どこまで守れる仕組みをつくれるか
という問題です。
これは障害福祉や医療の問題ともつながります。
そして、こうした視点を持つことで、今回の八重洲駐車場のニュースは、単なる「地下シェルターの話」ではなくなります。
10.「恐怖」ではなく「準備」という視点
安全保障のニュースは、ともすると恐怖をあおる方向に進みがちです。
しかし、私はそうした捉え方をしたくありません。
弾道ミサイルの危険性を考えることと、戦争を予測することは同じではありません。
危機に備えることと、危機を望むこともまったく違います。
地震への備えと同じように、
「起きてほしくない。しかし、起きた場合には被害を小さくしたい」
という考え方があります。
避難施設も、そのためのものです。
東京都が示している緊急一時避難施設も、ミサイル攻撃等の爆風などから直接の被害を軽減するための一時的な避難施設という位置づけです。
だから、こうした施設が必要になる社会を望むのではなく、
必要になる可能性がある以上、平時から備えておく
という考え方で見ることが大切だと思います。
11.60代から考えたい「自分の生活を守る準備」
ここで、話をもう一度、自分自身の生活に戻してみます。
60代からの再スタートを考えるとき、私は次の五つを意識することが重要だと考えます。
① 収入を守る
仕事、年金、副業、就労支援など、自分に合った収入の選択肢を考える。
② 支出を把握する
固定費や日常生活費を把握し、無理のない生活水準をつくる。
③ 健康を守る
働き続けるためにも、日常生活を維持するためにも、健康管理を生活設計の一部として考える。
④ 公的制度を知る
医療、福祉、就労支援、年金など、自分が利用できる制度を事前に調べておく。
⑤ 緊急時の連絡・避難を確認する
災害やその他の緊急事態に備え、家族や支援者との連絡方法、地域の避難場所などを確認しておく。
この五つは、安全保障の記事としては少し意外に見えるかもしれません。
しかし私は、ここに「60代リスタートラボ」と今回の記事を結びつける意味があると考えています。
12.八重洲駐車場から見える「これからの安全保障」
八重洲駐車場の整備を見ていると、日本の安全保障が少しずつ生活に近づいていることが分かります。
安全保障という言葉から、これまでは、
「自衛隊」
「戦闘機」
「ミサイル」
「外交」
といった言葉を連想する人が多かったかもしれません。
もちろん、それらは重要です。
しかし、実際に国民の生活を守るには、それだけでは足りません。
避難施設が必要です。
情報伝達が必要です。
通信が必要です。
医療体制が必要です。
交通機関との連携も必要です。
そして、一人ひとりが正確な情報をもとに行動する力も必要です。
そう考えると、安全保障とは、
「国を守る仕組み」であると同時に、「生活を守る仕組み」
でもあることが分かります。
まとめ――60代からの再スタートにも必要な「備える力」
東京都が2026年8月7日に発表した八重洲駐車場の整備は、弾道ミサイル攻撃などを想定した避難環境をより安全にするためのモデル事業です。
このニュースを安全保障という大きなテーマだけで考えることもできます。
しかし、私はもう一つの見方ができると思います。
それは、
「私たちは、変化や危機に対して、どの程度の備えを持っているのか」
という問いです。
国であれば、防衛力や避難施設、情報伝達などが必要になります。
自治体であれば、地域住民を守る仕組みが必要です。
そして個人であれば、仕事、収入、健康、医療、福祉、住まい、家族との連絡などについて、日頃から考えておくことが大切になります。
これは、私が「60代リスタートラボ」で考えている「60代からの再スタート」ともつながっています。
人生の再スタートとは、単に新しい仕事を探すことではありません。
変化が起きても、もう一度立て直せる生活をつくることです。
安全保障も、根本的には同じなのかもしれません。
危機が起きないことを願いながら、起きた場合に備える。
他者の力を借りながらも、自分たちでできる準備をしておく。
そして、恐怖に支配されるのではなく、正確な情報をもとに冷静に行動する。
八重洲駐車場の地下施設化は、こうした「備える社会」を考える一つのきっかけになります。
そして60代からの人生についても、
「何も起こらない人生」を期待するのではなく、「何か起きても立て直せる人生」を準備する。
私は、それもまた「再スタート」の重要な条件だと考えています。


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